iPhone 3Gで充電モードに移行しないACアダプターを充電できるようにする
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最終更新:2010/07/03
【テーマ】
iPhone 3Gに付属しているACアダプター(充電器)は、出力が5V 1AのUSB端子型のものです。しかし、市販のUSB端子型ACアダプターで同等の出力があっても、iPhoneが充電モードに移行しない、または、充電モードになったりならなかったりを繰り返す動作をするものがあります。
このページでは充電モードに移行させるための改造方法について、それらの情報が実際に機能するものか実験をすることが目的です。単純に充電器の改造方法を知りたい人は、改造の方法が書いてあるサイトを検索すべきです。
【調査】
何かに良く似た形状の充電に問題のある ACアダプターは、iPhone 3Gに付属しているACアダプターとどこが違うのか調べてみることにします。まず、USB端子のピンアサイン(端子の配列)を調べてみます。実に適当に検索したらアップルのサイトがヒットしました。USB端子のピンアサインは世界共通なのでどこでも問題なし、です。
http://support.apple.com/kb/TA26042?viewlocale=ja_JP&locale=ja_JP
4pinのうち、両端がVCC(5V)とGND、中間が[D+] [D-] (USB信号線)であることがわかります。ここで、iPhoneに付属しているACアダプターから出力されている電圧を測定します。USBの電源端子であるVCCは当然5Vですが、[D+]、[D-]にも電圧が出ています。無負荷時の実測で、[D+]に2.0V、[D-]に2.8Vの電圧がかかっていました。ここでは無負荷であることと、テスターの内部抵抗を無視します。
次に、iPhoneに接続しても充電モードにならないACアダプターの電圧を測定します。すると、[D+] 、[D-]はNC、つまりどこにも接続されていないことがわかりました。
【資料】
充電するための電圧は出力されているのに、なぜ充電モードに移行しないのでしょうか。ほとんどのサイトでは、[D+]と[D-]を10kΩの抵抗でプルアップしなさいと書かれています。
http://www.ipodlinux.org/wiki/Dock_Connector
例えばこのサイトでは、3.3Vを10kΩの抵抗を介して接続せよ、と書かれています。しかし、それでは付属品のACアダプタを測定した結果と符合しません。付属品のACアダプターをコンセントから外し、しばらくたってから各端子間の抵抗を測定します。VCC-[D+]間は30kΩ、VCC-[D-]間は24kΩという結果になりました。抵抗の値は内部の回路に影響を受けますが、ACアダプターの[D+]、[D-]は出力直前で処理していると思うので気にしないことにします。他の端子は面倒なので省略。
ここで先程のサイトをよく見てみましょう。"To force the iPod (useful for the iPod 5G) to charge in any case ..."とは書いてありますが、ページのどこにもiPhoneのことは書いていません。もう一度iPhoneについて詳細に記載された資料をさがしてみます。
http://pinouts.ru/PortableDevices/ipod_pinout.shtml
ここの27番pinの説明に"To charge an iPhone 3G / iPod Touch 2nd gen or Ipod Classic (6th Gen), usb data- (25) should be at 2.8v, usb data+(27) should be at 2.0v. This can be done with a few simple resistors: 33k to +5v (23) and 22k to gnd(16) to obtain 2v and 33k to +5v and 47k to gnd to obtain 2.8v. This is a notification to the iphone that it is connected to the external charger and may drain amps from the usb."と記載されています。この内容はiPhone 3Gの付属品ACアダプターを実測した結果と符合します。
推測するに、iPodの充電器のデータがiPhoneに流用できたので、10kΩプルアップ説がネットに広がったようです。しかしiPodのデータにも5Vにプルアップせよとは書いていないので、どこかで情報が抜け落ちたのでしょうか。
【方針】
実験の方針を決めるにあたり、iPhone対応をパッケージでうたう市販のACアダプター(5V 1A定格)の電圧を測定してみました。[D+]、[D-]ともに2.0Vがかかっていて、かつ、[D+]と[D-]は内部で短絡されているようです。これはiPhoneの付属品ACアダプターと異なる電圧、結線ですが、急速充電と思しき時間で充電が完了します。
iPhone 3G本体側である程度の幅をもった設計になっているのを良いことに、作業を簡単にするため、市販のACアダプターを参考にして改造します。ただし、改造する対象はACアダプターではなくDOCKケーブルです。
ACアダプターの内部にはAC100Vが直接かかっていますので、ACアダプター側を改造してショートなどが発生した場合、感電や火災の危険があります。
【材料】
(1) 100円ショップで売っているUSB-DOCKケーブル
全国に店舗があるセリアに置いてあります。独立系のショップでも見かけることがありますが、ダイソーには見かけませんね。
(2) 10kΩの抵抗を2本
大きさの都合で1/8Wを使いたかったのですが、手持ちが1/4Wしかありませんでした。精度は必要ないのでごく一般的な炭素皮膜(カーボン)の誤差5%品です。以前は近くの電子部品店で一本10円か20円で買えたのですが、閉店してしまったので、http://eleshop.jp/shop/ を利用するようになりました。商品はこれ。http://eleshop.jp/shop/g/g6AY31D/ 10円そこらの部品よりはるかに高い送料を払っていられないので、紛失リスク承知で郵便で送ってもらえるのはありがたいです。思い立ったときにすぐ部品を買いに行けないのは痛いですが。
【改造】
10kΩプルアップではなく、純正に近い気がする手抜き改造でいきます。VCCとGNDの間に10kΩの抵抗を2本直列に接続します。2本の抵抗にはそれぞれ2.5Vがかかりますので、中間から5Vの半分2.5Vが取り出せます。取り出した2.5Vを[D+]と[D-]の両方に接続します。これだけです。[D+]の電圧は純正のACアダプタより0.5Vも高いですが…。手持ちの抵抗から純正ACアダプタに近いものを選んだため抵抗値は1/3程です。分圧にしか使わず、電力も抵抗器の定格(1/4W)におさまっているのでまあいいでしょう。2.0Vを取り出せれば良いのでしょうが、ここはiPhone 3Gのマージンに期待します。
抵抗2本をDOCKコネクタのハウジングにおさまるように形を整え配線したあと、USBケーブル側から来ている[D+]と[D-]のワイヤを切断して端末処理します。改造したDOCKケーブルは[D+]と[D-]を切断しているので、同期には使えなくなります。DOCKケーブルはUSB端子部でACアダプタから外せるので、電池式のUSB電源BOXで充電モードに入らないものもあわせて充電モードに移行するか試してみます。
改造前 (クリックで拡大)
改造後 (クリックで拡大)
1/4W抵抗でもDOCKコネクタのハウジングに余裕をもっておさまりました。
【結果】
付属品のDOCKケーブル接続では充電モードに移行しなかったACアダプタ、電池式(単三2本をstepup)の充電器のどちらも、改造したDOCKケーブルでiPhone 3Gと接続すると充電モードに移行するようになりました。
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